Category: Books

小林章 / Book&Design / 2020年

Monotype タイプディレクター・小林章氏による『欧文書体』シリーズ?第3段。これまでのものは選び方、使い方に関するものだったが、今回はとうとう「つくり方」である。レタリングやタイポグラフィに関する本は数あれど、書体づくりのハウツー本は洋書でもほとんどない。また’80年代ぐらいまではレタリングの本も見られたが、ここ40年ぐらい錯視調整まで言及した本格的なものはほとんど出てないと思う(桑山弥三郎さん以来?)。せいぜいがカフェの黒板メニューの書き方ぐらいじゃなかろうか。それを思うと、かなり貴重な本となる。ぜひ手にとって、現役で第一線で活躍している著者の技を盗んで欲しい。

Hannah Haeusser, Maximilian Borchert 著 / Verlag Hermann Schmidt / 2017年

ドイツ語でのみ用いられる文字 “ß”(エスツェット)だけにフォーカスした変態本(笑)。400もの書体の ß ばっかりを集めた本で、右ページに巨大な ß を一文字だけ、左ページにその書体の解説(英語)がある。一応解説文はその書体で組まれており、小さいながら主要文字の見本も付いてはいて、一応見本帳の体(てい)をしている。文庫本サイズだが、本文組の見本としてはまぁ十分だろう。しかしなんでまぁこんな本を思いついたのやら…。ちなみに ß は18世紀頃までは使われていた s の異体字・「長い s」と呼ばれる ſ と s の合字であり、つまり s がふたつくっついてこんな形をしているので、ß が出せない場合は「ss」と綴るのが正しい。決してギリシャ文字の β(ベータ)ではないので注意。

エミール・ルーダー(著)、スミ・シュミット(訳)、ヘルムート・シュミット(監修) / ボーンデジタル / 2019年

スイススタイルのタイポグラフィを世に広めた名著。本書は1967年にドイツ語・英語・フランス語併記で出版され、以来ずっと金字塔的な扱いをされている本である。それが出版から半世紀の時を経て、やっと和訳された。筆者は原書を持っているが、英語に不慣れで当然ながらちっとも読んでない(笑)ので、何がどう名著なのかはよく知らない。ちなみに原書は紙の取り都合のせいかどうか知らないが、一時期長方形で出版されていた時期もあった。今は出版当初の通り正方形になっており、日本語版もそうなっていて嬉しい(なんのこっちゃ)。なかなか値の張る本だが、タイポグラファを志すなら一読しておいた方がいいと思う。

ちなみに監修者のヘルムート・シュミット Helmut Schmid さんはポカリスエットなどのロゴをデザインした日本在住のデザイナーであったが、この本の完成を待たずに昨年急逝された。ご冥福をお祈りいたします。

スティーブン・コールズ 著、田代眞理 訳、akira1975 監修 / ビー・エヌ・エヌ新社 / 2019年

2012年に出版された The Anatomy of Type: A Graphic Guide to 100 Typefaces の日本語版。著者が選んだ主要な100書体について15のカテゴリーに分類し、詳細に図解した本である。書体の中から特徴的な文字をピックアップして超拡大し、そのポイントポイントを解説している。男の子は昔懐かしい「かいじゅうずかん」などを思い浮かべていだければいいだろう。書体の由来や効果的な使い方、似ている書体などなども。初心者にはもちろん、日頃使い慣れている人も、今一度見直してみると新たな発見があるだろう。オススメ。

小林章, 田代眞理 / ビー・エヌ・エヌ新社 / 2019年

日本の街なかにある英文のサイン(標識)を正しく見やすいものにしよう、というガイドブック。この本でいう「デザイン」は本来の意味の「設計」に近く、とにかくまずヘンな英語をやめよう(笑)というのにたくさんのページを割いている。まずそこからかよ! というのはなんだか嘆かわしくなるが、とにかくネイティブの人にとって「?」という英語がかなり氾濫している状態はちょっと悲しい。ちゃんとした翻訳者をアサインできない仕事がどれほど多いかという事でもあるだろう。かくいう筆者も、地元のとある中古車販売店のサイトを作る時に困った事がある。そこは米軍関係者を主に相手にしており、そういった方面の手続きを素早くできる事を強みとしていたが、その事をその店では「ミリタリーサービス」と呼んでいた。サイトは全部英文だったが、それをそのまま Military Service(=兵役につく事)と表記したら多分かなりの誤解を生むだろうと思い、何度か元請けに確認をお願いした記憶がある(結局どうなったかは忘れたし、そのサイトももうない)。

話が逸れた。えー、あとはもちろん書体選びや文字組みなどについて述べられている。もう20年近くドイツに住み、世界中を飛び回っているタイプデザイナーが言う事なのだから、これほど確かな情報もないだろう。派手さはなく地味な事ではあるが、こういった「基礎」はちゃんと身につけておいて損はない。欧文書体を「飾り」として使うだけではなく、ネイティブの人が見てちゃんと「伝わる」ようにしたいデザイナーは必携。

高岡昌生(著), 高岡重蔵(監修) / 烏有書林 / 2019年

欧文組版の日本語書籍における決定版。「タイポグラフィの基礎とマナー」とサブタイトルにある通り、目を引く派手なデザイン例ではなく、ホントに「基礎」をしっかり教えてくれる教科書である。各章に課題があり、実際に手を動かして組版を学べるようになっているので、ぜひ読むだけではなく実践して学んで欲しい。語りかけるような平易な文章で書かれているので読みやすいと思う。東南アジアなどで、変な文字組みの日本語の看板などを見たことがあるだろう。基礎を学んでおかないとああいう変な文字組みをしてしまい、そしてそれに気づくことすらなくどこかでネイティブの方々やエキスパートに「あ~あ」と落胆されてしまうので、そうならないようしっかり学んでおきたい。
まぁでもネイティブの人たちもみんなしっかりしてるかというと、あんまりそうでもない。筆者はアイリッシュ音楽が趣味で洋書の楽譜を多数持っているが、それらの文字組みはなかなかにヒドい(笑)。それらを作ってる人たちにもこの本を読んでもらいたいと思うぐらいである(ムリだけど)。
2010年に美術出版社から出版されたものの増補改訂版。前の版を持ってる人もぜひどうぞ。

/ Actual Source / 2019年

アメリカはユタ州にある Actual Source というデザイン事務所が不定期(?)に発行しているアートブックの第8号で、今回はタイプデザイン特集。とは言ってもほぼ書体見本帳となっており、近年制作された個性的な書体を100種紹介している。1書体平均5、6ページほど使っており、600ページものボリュームがある大著。印象としてはディスプレイが多いかなという感じ。ちなみに書名の shoplifter とは「万引き」の事で、映画の「万引き家族」の英語タイトルがこれである(笑)。

Typodarium 2019

Raban Ruddigkeit, Lars Harmsen 編 / Schmidt Hermann Verlag / 2018年

今年も出ました、フォント日めくりカレンダー2019年度版。毎日1書体いろんな書体を見られる便利なカレンダーで、いえばプッシュ型のコンテンツである(言い過ぎ)。プッシュ型のいいところは、普段自分が興味を持たずアクセスしない情報がぽんと提示されるところである。そこから新たな発見があるだろう。だからテレビも大事なのよね。ネットばかりに張り付いてちゃダメですよ皆さん。うんうん(何の話だ)。

The Fontsmith Library

/ Fontsmith / 2018年

英国のタイプファウンダリー Fontsmith の書体見本帳。掲載書体は40種ほど。最近の書体見本はWebで済まされることが多く、フォント単体のリーフレット的なものは少量作られるが、こうしてまとまった見本帳は最近発行されることがほとんどないので貴重だろう。昔は Linotype や Fontshop が分厚い見本帳を発行してたものだが…淋しい。文字は印刷されたものを見たい、という人は買っといて損はない。見本帳そのものは日本円で2,200円ぐらい。で、送料は1,500円ぐらい(笑)。3,000部限定。

Yearbook of Type III

/ Slanted / 2018年

随分前に購入してあったのに紹介を忘れてた(笑)。ドイツのタイポグラフィマガジン Slanted が発行している書体年鑑の第3段。2014年以降に発表された欧文書体の中から優秀なものをピックアップして掲載している。1書体につき見開き2ページずつ。『年鑑』と名はついているが毎年発行しているわけではないのがミソである。日本からは恒川龍一さんの Mighty Slab が選ばれている。なぜか Amazon では取り扱ってないようなので、Slanted のサイトより直接購入する必要がある。日本でも取り扱ってる書店もあるかもしれないが、寡聞にして知らず…。