グラフィックデザインについて

CI・VI・BIとは(シンボルマーク・ロゴタイプ)

CIとは

CIとはコーポレート・アイデンティティ(Corporate Identity)の略です。「組織の固有性」、えーと、まぁそれを見れば「アレだ」と認識できるものです。ヒトの場合はその外見・顔で「そのヒトだ」と判断できますよね。それと同じように組織をパッと見で判断できるようにするもの、簡単に言うとシンボルマークやロゴタイプの事です(それでけではないですが、後述します)。赤地に黄色の大きな M を見れば、「あぁマクドナルドだ」と判りますよね。そういったものです。

CIはその組織を見た目で体現できているかどうかが鍵となります。ファストフード店のものは安くて親しみやすく、かつ美味しそうでなくてはならず、高級店のものは高そうで品格がなければなりません。自分ではなく、他人が見てそう思えるかどうかが重要です。

CIは作ったらそれで終わりではなく、その「使われ方」のマニュアルも作成しなくてはなりません。勝手に色を変えたり、マークとロゴの配置や比率を変えたりしては「アイデンティティ」としての意味がなくなります。ヒトはずっと同じ顔。まぁ経年変化は免れないところですし、最近は美容整形などもありますが(笑)、しょっちゅう顔が変わるようでは信用をなくすでしょう。それと同じです。徹底して同じイメージを保つようにします。普通「マンネリ化」はネガティブな言葉として使われますが、CIに関しては「マンネリ化」を目指します。「見た事あるよ」と言われるのが目標なのです。世界中どこへ行ってもマクドナルドは全部同じ看板。そういう事です(歴史的建造物近辺では景観に配慮し、色をシックなものに変える事がありますが、例外です)。

それゆえ、CIは流行を追ってはなりません。「今流行りのデザイン」をしてしまうと、5年後には「5年前によく見たな」と言われるようになってしまい、以後、ただ「古臭い」というイメージが付いて回る事になります。10年20年と使い続けるCI・VIには耐久性が求められ、それにはやはり普遍性を持った「王道・シンプル」なものがふさわしいと言えます。

筆者が制作した知人の事務所のCIマニュアル(部分)

※NTTのCIマップは権利者の申し立てにより削除いたしました。ご迷惑をお掛けしたことをお詫び申し上げます。JAGDA発行のVisual Design Vol.2にほぼ同じものが掲載されていますので、興味のある方はご一読下さい。

JAGDA教科書 Visual Design Vol.2 タイポグラフィ・シンボルマーク

マニュアルができたら、それに従ってCIが入るものをすべてデザインしていきます。普通の小さな会社でも、看板・名刺・封筒・領収書・見積書・段ボール・社用車・ユニフォーム・IDカード(ちなみに「ID」はIdentityの略です)などのデザインが必要になるでしょう。一番大規模なものが航空会社らしく、デザインするアイテムの総数は2万点にも上るといいます。当然莫大な金額がかかります。

なぜCIを導入するのか?

ではなぜそうまでしてCIを導入するかというと、先に挙げたように「アイデンティティを保ち、一般への認識度を高めるため」です。知名度を高めたいなら、質の良いCIを導入するのが一番手っ取り早いです。それと職員の意識を高めるため。「一つ旗のもと」という言葉があるように、一致団結を促すためでもあります。戦国武将はそういう効果を知っていたため、家紋を旗に入れて掲げておりました。まぁ戦場で仲間を識別するためと言う意味もあるのですが、それも「アイデンティティを保ち、一致団結するため」です。街中で細い青の横縞シャツを着た人を見たら、「あ、佐川急便だ」と思いますでしょう。それを着ている人も、所属が一発で判る自分が何かマズい事をすれば、会社の顔に泥を塗ってしまう事を自覚します。だからマナーを良くしようと思う。そういう効果があるんです。直接的な営業利益には直結しませんが、認知度と職員の意識が高まれば、結果利益も上がっていくのではないでしょうか。

VI・BIとは

VIとはビジュアル・アイデンティティ(Visual Identity)の略で、組織(corporation)以外の、例えば商品のブランドやショップなどのマークやロゴの事をいいます(ま、機能的にCIと特に違いはないのですが、Corporation ではないのでVIと呼び変えています)。アパレル関係の会社はターゲットの年代ごとにブランドを作り、それぞれにロゴを使っています。オンワードの「自由区」や「23区」などのロゴがVIに当てはまります。中核を担うような商品となると、単にビジュアルのみではなく、BI(ブランド・アイデンティティ Brand Identity)とでも呼べる戦略が必要になってきます。皆さんも洋服を買う際、ロゴが入ってるか否かで選んだ事はあるでしょう。ファッション業界ではかなり重要な事がお解りになるかと思います。

CI・VI・BIを開発するという事の重要性

このように大変重要で、かつ長年にわたって使われるCI・VI・BIを、「5万で一週間以内に」とか言う依頼者が大変多いのが現状です。このページ右上に出ているGoogleの広告にも「無料で提案!」とかいうのがありますが、そんな商売するなよというのが私の正直な感想です。そんなに簡単に安価に、自社のアイデンティティを定めていいものでしょうか? あなたの、あなた方の顔になるものですよ? 我々デザイナーは、まずその話から始めなくてはならないので結構大変です。ブランディングというのは、そんなに安直にやっていいものではないし、それでは成功しません。右上の広告に出ているサイトで制作されているロゴのほとんどは、造形的には素晴らしく、なんら問題ないレベルです。しかし、納品先の組織やブランドをきちんと体現できているのか、運用マニュアルはどうするのかという点では疑問が残ります。

また、シンプルなロゴは作るのに大して労力がかかっていないように見えますし、実際それ「だけ」を作るのには大した苦労はいりません。上のNTTのロゴもまぁ簡単に描けます。しかしこれができるその裏側で、大変な数の捨てられた案がある事を忘れないで下さい。実際この二重丸、これに決まるまではたくさんの案がありましたし、この案で行くと決まった後には、円の大小の比率・線の太さ・青みの具合を変えてかなりの数のバリエーションを作ったそうです。その中でベストのバランスを持ったものを拾い上げて決定しています。その労力に見合う費用というのをお考えいただきたいと思います。

ロゴに既存書体は使えない?

結論から言うと、問題ありません。詳しくはタイポグラフィについてで述べていますので、参照して下さい。

公募で決めるのは良策ではない

自治体や半公的機関などがよくロゴやマークの公募を行なっていますが、ほとんどが残念な結果になるのが現状です。理由は、第一線級のデザイナーはまず応募しない、という事が挙げられます。日々の仕事に追われているのに、当選しなければギャラの発生しない公募になど割く時間はないのです。よって、そこそこのデザイナーかまったくの素人しか応募してこないので、優秀な案が集まる事はほとんどありません。第二に、公募側の開発意図が応募者にあまり伝わらない事も理由として挙げられます。どうしても短い文書だけになり、そこから開発意図を汲み取るのはなかなか難しいでしょう。第三に審査員の審美眼です。こういうものは少数の有識者が独断で決定すべきですが、見識のある審査員がいる事はほとんどなく、だいたい普通の人の多数決になってしまいます。そうすると、まったく特徴のない、平々凡々で無難な案に行き着くのが関の山です。数多の地方に採用されているいわゆる「ゆるキャラ」のほとんどが公募なのですが、その少々残念なクオリティを見ればよくお解りになるかと思います。一般企業はその事がよく解っているので、公募を行う事はほとんどありません。

くまモン
熊本県のマスコット「くまモン」。有名な放送作家の小山薫堂氏の提唱により、good design company代表の水野学氏がデザイン。最初から一線級のクリエイターが関わったこのマスコットは、現在かなりの人気者。

例外的にTBSや東京ミッドタウンがロゴの公募を行った事がありますが、共に賞金が500万円と高額で、東京ミッドタウンの方は設計者の一人、世界的建築家の安藤忠雄をはじめ、一流のクリエイターを審査員に揃えてました。公募を行う場合、これぐらい気合いを入れないとダメだと思って下さい。

ロゴマーク?

正確に言うと、「ロゴマーク」という言い方は誤りです。先に挙げたNTTの例で言うと、二重丸が「シンボルマーク」、「NTT」という文字が「ロゴタイプ」となります。今は、正確ではありませんが、両方とも「ロゴ」と呼ばれる事が多いです(欧米でも logo と呼ばれています)。組み合わせとしては以下の3種があります。

  1. シンボルマーク+ロゴタイプ
  2. ロゴタイプのみ
  3. シンボルマークのみ

通常は 1. か 2. でしょう。ソニーパナソニックなどは 2. ですね。3. を選択する所は極めて珍しく、ナイキマクドナルドアップルなどごく小数です。よほど知名度に自信がないとできない芸当です。

1. の場合、ロゴタイプはシンプルなものにするのが普通です。シンボルマークがあり、かつロゴタイプも凝ったデザインにしてしまうと、大抵はバランスが取れずゴチャゴチャした感じになりがちです。2. の場合は、文字に色々装飾を施してもいいでしょう。

コーポレート・アイデンティティ戦略
コーポレート・アイデンティティ戦略
中西元男 著

CIの第一人者であり、NTTも手がけたPAOS代表の著書。松屋銀座やKenwoodをデザインによってV字回復させたその手腕が紹介されています。

ロゴライフ 有名ロゴ100の変遷
ロゴライフ 有名ロゴ100の変遷
ロン・ファン・デル・フルーフト 著

タイトル通り、世界的に有名なロゴの変遷を追った著書です。

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