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沖縄の家紋(紋章)

「沖縄+家紋」とかで検索する人が結構いるようなので、私の知っている限りをここに記しておきます。以下、私の蔵書の中で唯一沖縄の家紋について書かれた書籍である『琉球紋章I』(本 恵郷著,琉球紋章館. 1992年)を参考にしています。

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基本的に沖縄の家々に家紋はない

これ言うと結構びっくりされるんですが、沖縄ではごく一部を除き、家紋を持っている家はありません。もちろん我が宮里家にもないです。なので紋付袴なども存在しません。

なぜかというと、沖縄は知っての通り古くは「琉球」と呼ばれた独立国家であり、日本とは別の国でした。つまり日本から見てここは「外国」であり、日本の習慣である家紋なども元々存在しませんでした。琉球は14世紀以降は中国(当時は清や明)より冊封を受け、宗属関係を築いていましたが、1609年に薩摩の侵略を受け、そこの属国のような関係にもなりました。以降、薩摩は琉球からも税を取っていましたが、薩摩はこの事を中国にひた隠しにし、そのため日本文化が琉球に広まるのを嫌い、これを禁止しました。それが家紋文化が広まるのを防いだようです。

一部の家は家紋を持っていた

で、家紋を持っていた「ごく一部」の人たちとは誰かというと、旧琉球王家や身分の高かった士族たちです。薩摩藩士と直接付き合いのあった彼らは、その真似をして家紋を持つようになったようです。なので沖縄で代々伝わっている家紋があるという人は、いわゆる旧家が多いと思われます。

一番有名なのは旧琉球王家・しよう家の「左三つ巴」です。これは日本でもごく一般的(主に寺社に多いようですが)なもので、それをそのまま使用しています。

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『琉球紋章I』より引用

しかし、それ以外の士族の家紋は非常に変わっており、日本本土ではまず見られないデザインが多数あります。もちろん専門の職人などはいなかったので、薩摩藩士の着物などにあった紋をうろ覚えして参考にし、独自にデザインしていったようです。もう元が何だったのかよく判らない(笑)ものも多数あります。以下に参考文献よりいくつか引用します。

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『琉球紋章I』より引用

ちなみにこの紋章の習慣は、世界でも日本とヨーロッパにしか存在しません。同じく古い文化を持つ中国やインド、中東などでは発生しなかったようです。

あと参考文献の『琉球紋章I』ですが、タイトルに 1 とあるからには 2 や 3 があるかと期待される方も多いと思いますが、私が知る限り続編が発行されたという気配はありません。残念です。この本は沖縄の古書店なら比較的楽に入手可能だと思います。

その他にも沖縄の家紋に関する文献はあるようです。詳しくは以下をご覧ください。

※この note は2015年8月に私のブログで公開したものに加筆修正して転載したものです。

カフェラテおごってください。