世界的に著名なタイプデザイナー・カリグラファーである Hermann Zapf ヘルマン・ツァップさんが6月4日、亡くなられたそうだ。享年96。

我々書体好きで知らない人はいないだろうが、知らない人でも Mac をお持ちの方は氏のデザインした書体をすでにお持ちである。Zapfino、Optima、Palatino、Zapf Chansery、Zapf Dingbats などなどがそうである。カリグラフィーを学んでいたアップルの創業者、スティーブ・ジョブズは、Mac に搭載するフォントもかなりこだわって選んでいたため、質の高いこれらのフォントが選ばれたらしい。

私はもちろん、ツァップさんにお会いしたことはない。ただ2010年、ドイツのLinotype社(現Monotype社)に勤められている書体デザイナー・小林章さんが沖縄にいらした時、お土産に何がいいかと聞かれ、不遜にも「もし可能なら、ツァップさんとの書体開発でやり取りしたデザイン画か何かが残ってたら...」とお願いして、数点いただけた。うち以下のもの1点をデスクの前に飾っており、毎日眺めている。

Palatino Sansデザイン

これは Palatino Sans の開発時に、小林さんがデザインしプリントアウトしたものに、ツァップさんが直接手書きで指示を書き込まれたものである。思索の跡が伺われ、今となっては何か神々しささえ感じてしまう(笑)。他にも10点ほどいただいたが、残念ながら Fax で送られたコピーである。ただ、手描きでオーナメント類をスケッチしたものなので、もしオリジナルの原画だったなら...と悔やまれる(笑)。ちなみに写真の青いフォルダは、いつもツァップさんが使っていたものだそうである。ツァップさんから何か文書が来る時はいつもこれだったそうだ。フォルダには一切何も書かれておらず、商品名はおろかメーカーさえ不明である。ドイツならどこでも手に入るものだろうか。

zapf-sketch.jpg

ツァップさんの著書は和書では一冊だけ存在する。『ヘルマン・ツァップのデザイン哲学』がそれで、私はこれを自宅近くの小さな本屋に注文して入手した。まだネット書店がさほど発達してなかった頃だったと思う(だったらネット使ってるしね)。届いたと連絡があり受け取りに行った所、17,000円という値段に店員さんが驚いていた事を覚えている(笑)。当時結構ムリして購入したものだ。読んで眺めて、しばらくは本棚の肥やしだったが、カリグラフィーの学習を再開してからは模写もさせていただいた。おかげでちょっとカバーが傷んでいる。

偶然にもツァップづくしで年賀状を作成した4年前の2011年、日本でもツァップさんの作品展が開催された。行く予定で東京行きのチケットまで入手していたが、ちょうどその頃ちょっとしたトラブルが発生してしまい、ドタバタして行くのを断念した。今となっては悔やまれる。

心の師と仰ぐ方は何人かいらっしゃるが、また一人、お会いすることも叶わず逝かれてしまった。自分はいつになったら、いくつになったらあの方々へお目にかかれるほどになれるのだろうといつも情けなく思う。

Herzliches Beileid. ご冥福をお祈りします。

Balearic Thread
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