『THIS IS IT』を観て来た。

別段、マイケル・ジャクソンのファンではない。でも何か知らないが、観ておかねばならないような気がして映画館に足を運んだ。

マイケルはリハーサルゆえに、本イキでは歌っても踊ってもいない。しかし海外のアーティストは口パクが普通と聞いていたので、リハでもちゃんと歌っているマイケルがちょっと意外だった。「8小節減らそう」「いや、余韻を残したいんだ」、「これぐらい?」「速すぎる。もっとゆっくり、ベッドから這い出るように」。スタッフと直接意見をやり取りしながら、ステージ作りに真摯に取り組んでいた。ステージに立つマイケルはどのダンサーよりも細く、そのせいか手が大きく見える。いや、他の人と比べても、明らかに大きい。こんなに大きな手をした人だったのかと、今更ながら気づいた。

ジャクソン5の頃の曲までやるつもりだったらしい。映画ではそれも披露していた。それらも含め、知らない曲は1曲だけだった。後は全部知っていた。彼の歌声は、アジアの端っこの小さな島国の、そのさらにちっぽけな南の島の住人にも、確実に届いていたことになる。たいしてファンでもない30代後半の凡庸なおっさんの足を、映画館に運ばせるだけの力がそこにはある。それを思うと、素直に驚嘆してしまう。

人の価値は死んだ時に初めて解るというが、スキャンダルにまみれ、その名が地に落ちた晩年ではあったが、間違いなく「惜しい人」を亡くした、そう言える人だったんではなかろうか。

その大きな手で、常人の何万倍もの様々なものをつかんだマイケル。けど、自分の本当に欲しかったものは、つかめていたのだろうか。今となっては、そうであったことを願うしかない。

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