Linotypeの小林さんから、「The Lost Letters」という小冊子を送っていただいた。こちらの記事で紹介されているものだ。

The Lost Letters

Mr. Typoは、あらゆる文字が欠けた(登場人物のセリフも欠けてる)時代へとタイムスリップする。なんとか看板の字を読み解くと、2108年2月15日である事が判明。そんな中で戸惑っていると、ようやくまともにしゃべる一人の老人、Morrison Miedinger(マニアにとっては笑える名前)と出会う。聞けば、フォントの違法コピーが氾濫してタイプデザイナーたちは食えなくなり、隠遁生活を送っているという。そのせいで、まともな字組みが失われたというのだ。事態を憂慮したMr. Typoは、マスコミを使ってキャンペーンを行い、タイプデザイナーたちの重要性と権利を取り戻す、というお話。

私も恥ずかしながらデザイン業をやり始めた頃、フォントは無料が普通だと思っていた。OSに付属してるし、世の中にはものすごい数のフリーフォントが配布されているのに、わざわざ買う意義はなんだ? と。しかしほどなく、それが勘違いである事を思い知る。フリーフォントは奇抜なデザインのディスプレイ書体がほとんど。初心者はそっちの方に目が行ってしまい、スタンダードなローマンやサンセリフは「つまんない」としか思わない。が、目が肥えてくると、例えばAdobe Garamondのような普通のローマン体を「美しい」と感じるようになる。そこでふと気づく。「あれ? フリーがないじゃん」と。使おうにも使えないのだ(まぁAdobe Garamondは、Illustratorなどにタダで付属してたりするが)。たまにOptimaがあるじゃんと思えば、パソコンのモニタ上で小さく使うならまだしも、印刷物などに大きく使うには絶望的な、粗悪なトレースをした違法コピー品であったりした。ここでようやく、「ああいうマトモ(?)なフォントは有料なんだ」と気づく。

しかしタダのフォントに慣れてしまうと、1書体数千円もするフォントに金を払うのには結構勇気がいる。が、よくよく考えれば、タイプメーカーやタイプデザイナーは、これで生活しているのだから、金を払うのは当然至極である。そう思って10年ぐらい前に購入したのが、「Creative Alliance」というCD-ROMが付いた見本帳。

Creative Alliance 9.0

Creative Alliance 9.0

付属のCD-ROMには、この見本帳に掲載されている書体がすべて入っている。が、ファイルは暗号化されており、そのままでは使えない。CDに入っている専用のアプリをインストールし、欲しい書体を探すと、FAX注文用紙が表示される。これにクレジットカード番号を書いて販売代理店にFAXすると、暗号解除キーが返信されてきて、それを入力するとその書体のみ使用可能になる、というしくみであった。10年ぐらい前まではこんな感じで欧文書体を購入していたが、今ではこんな手間はなく、インターネットでダウンロードできる。良い時代になったものだ。だから皆さん、欲しい書体があったら、質問掲示板で「この書体のフリーのものを探してます」と書いたりしないで、ちゃんと購入して欲しい。有料のものが、無料で配布されているはずがないのだから。作っている人には、ちゃんと生活があるのだよ。

ただ、和文フォントの高価さはどうにかならないかなー、とは思う。最近はモリサワパスポートやフォントワークスのLETSなどがあるが、それ以外は結構な金額だ。開発に時間と費用がかかってるのは良く解るが、薄利多売で回収できないもんだろうか。出来上がってしまえばコピーで済むのだし、その方が違法コピーが減るような気がするんだけど......マーケットが小さすぎるのかなー。

ところでこのCreative Alliance、この中には、暗号化されているとはいえ、大量の書体が詰まっている。何とか暗号を解読できれば、これらの書体は使い放題......という事も頭をよぎったが、私はそこまでのハッカーではないのでできないし、できたとしてもやれば違法なのでやりませんけどね。

でもね。

なんだか宝の持ち腐れ感があるのは否めない。

目の前に、ニンジンをぶら下げられた馬の気持ちがよく解る(笑)。

Bodoni Campanile
この書体は Bodoni Campanile — 欧文フォント買うなら MyFonts