ミルキィ・イソベさんの作品集が出た。占い師のような名だが(笑)、そうではない。ブックデザイナーとして有名な方だ。

この本では、単に装丁の紹介にとどまらず、その本に使用した紙はもちろんのこと、本文まで携わった場合、その版面の位置やサイズ、書体の種類、行長・行間などなどの仕様の詳細、あまつさえ「どのようにしてこのデザインに至ったか」までが惜しみなく披露されている。ここまでされているブックデザインの作品集は他に見たことがない。また、本の内容や、本のサイズ・製本の仕方により書体を変え、版面の位置を変えたりするという、タイポグラフィを極めんと志す人にとっての至言がちりばめられているので、ぜひともお勧めしたい一冊である。

タイポグラフィにはデフォルトとも呼べる「ルール」がたくさんあり、その知識を得た人はルールを守る事ばかりに囚われてしまいがちだ。私は以前、駆け出しのデザイナーに組見本を見せた時、「このサイズでこの行間という組み合わせは、よく使われるのですか?」と聞かれたことがある。彼はつまり、「最適な組み合わせの解」を求めてきたのだ。「あー、そーゆー事考えちゃうのねー」と思うと同時に、「私もそうだったなぁ」と懐かしくなってしまった(笑)。

ルールを知る事は重要だ。しかしそれは、ルールを守るためではなく、「なぜそのルールはそうなっているのか」という「理由」について深く考えることが大切なのである。ルールに対する理解が深まれば、イレギュラーなケースに遭遇してもきちんと対応できるようになるからだ。ミルキィさんのこの本は、そういう事に気付かせてくれる。先の新人クンも、数値だけ覚えてしまうと、何でもそれで済ませてしまう危険性がある。それが美しくないケースでも、数値だけが先に出てしまい、それを妄信してしまうだろう。なので、「この場合だけの数字だよ」と言っておいた。

ブックデザインを主にやっている方というのはやはり知識人が多く、その文章も難解だったりする。戸田ツトムさんの文章などは、「日本語だよね?」と聞き返したくなるほど、冗談抜きに何が書いてあるのか私のアタマではさっぱり理解できない(笑)。ミルキィさんも端々にその哲学らしきものが出るが、かなり平易に書いてあるのでお勧めである。

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