スペインはビルバオにある、非常に奇抜な建築物で有名なグッゲンハイム美術館の設計者、Frank O. Gehryのドキュメンタリー映画、『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー』を観てきた。

この人を初めて知ったのは数年前、ミッド・センチュリー・モダンの家具が異様にもてはやされていた頃である。イームズやマッキントッシュらの名作椅子を復刻させていたドイツのヴィトラ(Vitra)社が有名になり、あらゆる雑誌で取り上げられていたが、その美術館、Vitra Design Museumを見た時、「どんだけぇ?い!?」とかなりの衝撃を受けたことは言うまでもない。あれだけぐにょんぐにょんの建物が建っている事が信じられなかった。驚愕すべきはあれを設計図におこし、なおかつ構造計算をした人、いやさあれを建てることを許可した人なのかもしれないが(笑)、ともあれなんちゅーモンを建てるんだと非常に興味を持っていた。

1929年生まれのゲーリーは、1978年の自邸で注目されるまでは不遇の人生を過ごしていた。当時、実に49歳である。それまでは自分の思い通りのものを作らせてくれる施主がいないことを嘆き、仕事もなく、いつも破産におびえながら暮らしていたらしい。精神的にも不安定になったらしく、セラピストの世話にもなったようで、現在までの35年間、ずっと同じ医者の所に通い続けているらしい(まぁ最近はほぼ友達づきあいのようだが)。それが今や、世界でも指折りの有名な建築家だ。しかしまぁ、あのぐにょんぐにょんぶりには、自分でも多少後悔するらしい(笑)。グッゲンハイム美術館に至っては、「なんてものを建ててしまったんだ」と恥ずかしくなったそうだ。しかしそれはどの建築でもそうらしく、1年後の点検時にはかわいく見えるらしい。

何となくそれは私にも解る。どんなにいいデザインができたと思っても、それが実際に印刷されたりサイトが公開されたりするまでには、結構な時間がかかるものだ。それを毎日見ているとやっぱり人間、飽きが来たりしてしまう。公開する頃にはもう見たくもないという事がよくある。しかししばらく経って見返すと、「ふむやはり天才だな」とか思ったりもするが(笑)、気付かなかったアラが目についてしまいがちで、やっぱり見返すこともなくなってくる。

でもこれはデザイナーには必要な事だと思う。Hermann Zapf氏は、自分の作品を壁に貼ることは絶対にしないという。そうやって自分の作品に満足している者に、到底進歩は望めないからだ。見習うつもりがなくとも自然とそうなっている自分は、飽きっぽい性格で良かったなと思う(笑)。

いわゆる単館系の映画で公開劇場は少ないが、興味があって近くに公開している劇場がある運の良い方はドウゾ。

P.S. 俳優ブラッド・ピットが大の建築好きで、そっち方面に進みたがっていたというのは有名な話だが、今でもその熱は冷めず、氏の事務所に非公式の弟子としてこっそり通い詰めているとかいうウワサがあるそうな。真偽のほどは判らずだが、ここを始め、両者が揃って写っている写真があちこちにある。まぁホントかも。

Wilke
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