アトリエ・ネロという建築設計事務所が、沖縄県建築士会本年度の「住宅建築賞」大賞を受賞した。受賞対象は「黄色い三角屋根の家」。平屋で、家の中心を大きな土間が貫き、その両側に部屋があるという、一風変わった家である。決して住み易いとは思えないが、空間としてはとても面白く、ちょっと住んでみたい気はする家である。

この建築事務所とは、私は一切関係がない。なのになぜここでこんな事を書いているのかというと、実はこの家の施主であるKさんとは、もう5、6年の付き合いになるのだ。私がフリーとして活動し始めた頃、知り合いを通じて紹介された経理専門の人(税理士の資格はないらしい)で、以来毎年の確定申告はKさんにお願いしている。いわば私の台所事情のすべてを知っている人である(恥)。Kさんもちょうどフリーとして活動し始めた時だったらしく、私が最初の客だそうだ。

いつも年度末にしか連絡を取らないが(笑)、去年の夏に突然連絡があり、「家を建てたから見に来て欲しい」と言われ、お言葉に甘えてお邪魔させていただいた。Kさんのお兄さんが構造設計家で、その話から「いやー、建築好きなんですよー」という話をしたことを覚えていて下さったのだ(私は高校卒業時、コンピュータか建築設計のどちらを学ぶか迷ったほど、建築は好きである。母方の祖父と曾祖父が宮大工だったそうで、その血筋かもしれない)。

着いて見た最初の感想は、正直言うと「なんぢゃこら」であった(失礼)。コンクリート打ちっ放しの壁に、真っ黄色の三角屋根。1間半はある大きな玄関を開けると、そこはガレージかと思われるような広い土間。その両側に縁側よろしくかなり高めの段差があり、そこに板間が広がっている。高い天上にはむき出しの木材の梁。そこにライトが規則正しく並ぶ。

しばらくは「ほえー」と見ていたが、段々と「ここは結構楽しい空間かも」と思えるようになった。子供の頃、段ボールや板きれで、ガジュマルの木の上に作った「ひみつきち」を思い出させるような、そんな空間だった。お金がなくて壁の漆喰は自分でやったとか、キッチンを作った時の苦労話をとても嬉しそうに話すKさんを見て、デザイナーを気取る私でも、「家」というものに固定観念があったなぁと気づかされたものである。安藤忠雄の有名な「住吉の長屋」も、受賞時に審査員をして「住んでいる人に賞をあげたい」と言わしめたほどの住み難い家だが(笑)、今では名作として語り継がれている。この家もそうなっていけばいいなと思う。

施主のKさんはとても明るく、滅多にこんなこと言わないが、「ほがらか」という表現がぴったり来る人で、も少し若ければ惚れてたかもしれない(笑)。母一人子一人でがんばり、家まで建てた。未だ子供どころか結婚もしていない33のおっさんである私は、ただただ頭が下がるばかりである。

Kさんはこの家をとても気に入り、しかも設計担当の根路銘さんは賞を受賞。こんなハッピーな家があろうか。みんなを幸せにできるデザイン、私もそんなデザインをしてみたい。

Merkin
この書体は Merkin — 欧文フォント買うなら MyFonts