2000年5月頃からずっと、I.D.という雑誌を購読している。アメリカのデザイン誌で主にプロダクトを取り上げているのだが、何かの雑誌に紹介されているのを見て何となく購入し、デザイン誌にしては安いので何となく購読し続けている(正確には、ほとんど読めないので眺めている・笑)。

この雑誌は歴史が古いようで、2004年に創刊50周年を迎えたのを期にアートディレクターを交代し、誌面を刷新した。それまで本文にはFF Scalaを使用していたのだが、この時Gerard UngerCorantoに替えられた。あまり見たことのないタイプのローマン体で最初はちょっと違和感があったが、今では馴染みつつも大変新鮮な感じがしてとても良い。当初は見出しにはGothamを使用していたが、それも後にCorantoに統一された。Webサイトにも同じ書体が使用されているので、その使用感をご覧頂きたい。

I.D.より。1行目RO、3行目VA・RD、5行目LLなどに注目。ほぼ全記事においてこの見出しのフォーマットが採用されている。

さてそのCorantoに、最近新しいファミリーが加わったようだ。2/25現在、まだ作者のサイトには掲載されていないが、2006年3・4月号から使用されだしている。見出し用の少し細目なウェイトのcapitals(大文字)なのだが、タダの大文字ではない。ligature(合字)やraised capital(和名不明)を持った、クラシカルなものだ。このような処理は、manuscript(中世の手書き写本)ではスペースの節約かもしくは計算違いでスペースがなくなってやむを得ずなのか(笑)、大変よく見られたものである。

印刷博物館『ヴァチカン教皇庁図書館展』カタログより9世紀初頭の手書き写本(部分)。ちょっとやりすぎ?

初めからこのような使用を期待してデザインされた書体にMatthew CarterのMantiniaがあるが、最近Optima Novaなどにも見られるように、こういった見出し用書体が揃うようになった。Zapfinoのようなカリグラフィックな書体もそうだが、活版上での再現が困難だった手書きで行われていた書字法が、活版誕生から500年の時を経てデジタル上で再現され出してきている。実に喜ばしいことである。これからも、活版によって失われてきた手書きの手法をどんどん復活させて欲しい。使う側もどのように使われていたかの知識が必須になってくるので、全体のレベルアップも図れて良い事だと思う。

ふと考えたが、和文書体でもこのような事はできないだろうか。連綿体や変体仮名をデジタル上に再現させるのである。専用のアプリケーションも開発し、前後の文字関係からランダムに適当な字体を選んで出力するのだ。キーボードを叩いて尾形光琳の気分が味わえるのはなかなかの醍醐味ではないかと思う。でも縦書きしかできないし、読める人の方が圧倒的に少ないのであまり意味はないかな(笑)。

Rainmaker
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