広告・デザイン業界では、普通に「クリエイティブ」とか「クリエイター」という言葉が飛び交う。担当業務名に「クリエイティブディレクション(ディレクター)」、略して「CD」などというのもあったりする。

しかし私は、個人的にはこの言葉を使うのは(何かの名称になっているもの以外は)極力避けている。何故かというと、私だけかも知れないが、この言葉を口から発する時に、かなりの小っ恥ずかしさがともなうからである。今風に言うと「サムい」のだ。

ひとつには横文字職業に憧れただけのチャラいヤツがよく使う言葉だから、というのもあるが(類似語に「クール」がある。「クールなデザインができるクリエイター募集」なんてのを見ると、さぶいぼが数万個は出る)、「創造」なんて滅多なことではできるものではない、と思っているからである。というより、人間には不可能とさえ思っている。人間がゼロから産み出したものなんて、この世にはただのひとつもないはずだ。すべては自然の模写から始まっている。言葉でさえ、自然の音や動物の声の真似から入っているはずだ。「自然界には直線がない」なんて言葉もウソ。水平線や地平線なんていう見事な直線があるし、ある2点を見た時、人間は頭の中にその2点を結ぶ直線を思い浮かべるだろう。それも自然が産み出す直線だ。そもそも英語で、「Creator」と頭文字を大文字で綴った場合、これは造物主・創造主である神のことを指す。「クリエイティブ」なんて簡単に使って良い言葉ではないと思う。

「それはお前が売れないへっぽこデザイナーだからだ。俺はいつも創造性を大切にしている」という輩もいるだろうが、私に言わせればピカソだって見たことのない絵を描いてはいない。キュビズムとて、正面と側面を同一平面上に描いただけである。まぁ、志として「クリエイティブでありたい」と思う事は良い事だけれど。しかしアイディアはいつだって、既存の何かと何かの新しい組み合わせだ。ゼロから「創造」はしていない。広告業界では古くから読まれ、名著とされている『アイデアのつくり方』の作者James Webb Youngでさえ、この本の中でそれを認めている。

だから何かを作る仕事をしている人は、常にそのアイディアの元となる「既存の何か」の収集に努めてないと、あっという間に枯れてしまう。仕事ばかりしていてはアイディアを消費するばかりだ。そうなると「あいつは使えない」となり、干され、おまんまの食い上げというハメになる。

だから私は今日もアイディアの収集のため、残業をせず、とっとと家に帰るのだ(笑)。

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