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先日、締め切りも押し迫ったかなり忙しい中、「ええいやってられるか」と言わんばかりに仕事を放っぽりだし、YUKIのライブを観に行った。恥ずかしながら、32年間生きてきてコンサートの類に行ったのはこれが初めてである。ラジオで先行予約の電話番号が発表された時、発作的に電話してしまい、20分かけてようやくチケットをゲットした。といって、特にファンだったというワケでもない(キライでもないが)。当時よくCMでかかっていた、『長い夢』という曲がいいなぁと思っていたぐらいである。

ステージはパワフルの一言に尽きる。あの小さい身体でよくも、という感じだ。会場はダンスクラブ松下というクラブでオールスタンディング、1,000人ぐらいがまさに立錐の余地もないほどだったが、その群衆を彼女ひとりでぐいぐい引っ張るほどパワフルだった。ステージ上にお立ち台を設け、時々それに登ってくれたので、背の低い私でも彼女がよく見えた。沖縄は8年ぶりという彼女は、その時もカチャーシー(沖縄では祝いの席で必ず踊られる踊り)を踊ったといい、『ハイサイおじさん』にのせてそれも披露してくれた。かなり暑かったらしく、「(汗で)パンツが食い込んだぜい!」と言いながらも、あれだけ動きながら最後まで息切れせず歌いきる様はプロそのものだった。

さてYUKIと言えば、先日大変哀しい出来事があった。今年の3月、もうすぐ2歳になるという一人息子が急死したのである。死因は乳幼児突然死症候群(SIDS)とみられている(ちなみに私は、単に原因不明の突然死に小難しい名前を付けているだけだと思ったが、どうもそうではないらしい)。このことについて、YUKIは夫とともに直筆でメッセージを発表した。『いつも通り、「おやすみ」と言ったままの突然のお別れでした。』と短い言葉で淡々と述べられているが、それが逆に哀しさを誘う。

私には姪がひとりいる。自分の子ではないが、それでも彼女が死んだらと思うととてもやりきれない気持ちになる。実子を亡くされたYUKIの哀しみはいかばかりか。彼女に向かって、「お察しします」などという軽々しい言葉は、口が裂けても言えないだろう。他人には察することなどできないほどの深い哀しみのはずだ。

しかし彼女はそこでとどまることなく精力的に活動。息子の死後リリースした『長い夢』『ドラマチック』はオリコンチャートTOP10入りを果たし、また今回のようにライブ活動も休むことなく続けている。

ライブは『ユキライブジョイ』と銘打ち、アルバム『joy』の収録曲を中心に行われた。『WAGON』に始まり、『スウィートセブンティーン』『ティンカーベル』『ブレーキはノー』『キスをしようよ』などをMCを交えながら歌い上げ、ラストは『JOY』を観客の大合唱とともに締めた。アンコールでは衣装を替えて登場し、新曲『ドラマチック』を披露して、最後に『ハローグッバイ』を彼女は歌った。

最後の最後、YUKIは泣いていた。いつものことなのかも知れない。感極まって泣くというのはよくあることだ。私は彼女のライブを初めて観るので、そこのところは判らない。だが、

私が見てきたすべてのこと
むだじゃないよって君に言ってほしい

そう歌いながら涙する彼女を見て、この歌詞に何か思うところがあったのかなどと、ワイドショー的な無粋な勘ぐりをするのもムリからぬ事と思って欲しい。

しかしYUKIは曲が終わると、両の手のひらでぐいと両目を拭い、精一杯の笑顔で

サンキューみんな!
サンキューオキナワ!
サンキューダンスクラブ松下!

と叫び、最後に

サンキューYUKI!

と言って、両腕に力こぶを作り、その力こぶに自分でキスをした。

「強いね」なんていうと、本人は怒るかも知れない。それでも私は、「あなたはスゴい」と賞賛の拍手を送りたい。「勇気をもらう」なんて言葉があるが、そんなことはあり得ないと私は思っているし、実際そんなものもらっていない。ただ彼女は、私の中の何かの「スイッチ」を入れてくれたような気がしている。しかし厄介なことに、このスイッチはちょっと気を抜くとすぐにOFFになってしまう。しっかりON状態を保ちたいと思う。

後で知ったんだが、彼女は私と同い年だった。私はホントにまだまだだ。

Hanyi Zi Dian Song
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