不意に事務所のドアベルが鳴った。滅多に来客のない(笑)我が事務所で、予定のないベルの音は、たいていがセールスか変な宗教関係と相場が決まっている。今日は、某国営放送が受信料を取り立てに来た。受信料を取り立てるような某国営放送などアソコを除いて他に存在せず、名を伏せるのも嫌らしいのであえて言おう。

NHK(えぬ・えぃち・けぇ)である。

これはマジの話だが、我が事務所にテレビはない。もちろんポリシーがあって置いてない訳ではなく、ただ単に貧乏なだけであるのだが、この事務所は普通の住宅マンションの一室にあるので、置いてあるだろうと仮定することには特に異を唱えない。ドアを開けると現れた、NHKと名乗る大肉中背の眼鏡を掛けた男性に、私は正直に「テレビは置いてないんですけど」と言った。すると彼は間髪入れず、

あーそうですか。どうも失礼しました」

と言い、今時テレビを置いていないということに寸毫の疑問も持たないかのようにさっさと引き上げようとした。私は言い訳がましく、

「あの、事務所として使ってますので、テレビは置いてないんです……」

と訊かれてもいないのに言ってしまった。彼は眼鏡の奥の笑ってない細い目で私を一瞥すると、とっとと立ち去ってしまった。

察するに彼は、「テレビがない」というセリフを幾度となく聞かされているのだろうと思う。原因は、あのカニだかエビだかいう人の横柄な態度と、その態度が反感を買って会長を辞任したかと思うと、すぐに相談役に就任するという傍若無人ぶりがますます反感を買い、受信料の不払い運動がかなり広がっているせいだと思われる。

払いたくない、という国民の気持ちは理解できる。しかしだからと言って、今時テレビがないと言い訳するのはいかがなものだろう。どんな家庭にだって1台はあるはずだ。そこで食い下がれない集金人たちの立場も解らんじゃないが、私のように本当にテレビを持たない人間までが、「ちっ。お前も不払いか」的な目で見られるのは大変心外である。もうちょっと気の利いた言い訳をしてもらいたい。「ケータイで見てます」とか。あれ取られるのだろうか。

ちなみにだが、私だって家にはテレビがもちろんある。そしてもちろん、NHKを一年の内2、3時間しか見ない私は、家でも受信料は払っていない。

※不払いはいけません。受信料を払うのは国民の義務です。きちんと払いましょう。

Gondolieri
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