FM STUDIO Scribbles

沖縄のグラフィック&Webデザイナー・宮里文崇の日々のラクガキ

カリグラフィーの題材に何を選ぶか困っている人へ。

カリグラフィーをやっていく上で、ぶつかってしまう大きな壁がある。技術的な壁は当然あるが、それとは別のもの。それを乗り越えたその先に、自在に文字が書けるようになってから来る巨大な壁。

そう、何を書くか。である。

んまー日本人である我々には非常に厳しい、ウォールマリアなんか目じゃないほどの『言語』という巨大な壁。ここで私は、これを乗り越えるための便利な立体機動装置っぽいものを紹介したいと思う。

まずは書籍。以下で紹介するものは、原文と日本語訳が同時に掲載されているので、題材選びには便利だろう。

以上は Amazon へのリンクだが、ページを開けば関連書籍が表示されると思うので、それらから探してみてもいいだろう。また、お気に入りの海外文学作品の中に好きなフレーズがあれば、原書を取り寄せ、該当箇所をどうにかして探し当て(これが結構大変)、それを題材にするなどしてもいいだろう。あなたがもしクリスチャンなら、よくあるように聖書を題材にしても当然いい。

以下はリンク集。名言を集めたサイト。

もし英語が読めるなら、最後のリンクが便利だろう。膨大な名文が掲載されているが、ジャンルや作者(?)ごとにカテゴリー分けされている。この他の海外のサイトを検索する際は、famous quotes とかで検索すれば色々ヒットすると思う。

最後に the Designer says より、ヘルマン・ツァップさんの名言をひとつ。

To make a living as a freelance designer—believe me—you have to work hard with your mind and with your hand.
For you want to earn at least enough money to dress your beloved wife nicely, to feed your children every day, and to live in a house where the rain does not drop on your drawing pad.
フリーランスのデザイナーとして生計を立てるには、頭と手を使って、一生懸命仕事をしなきゃならない。愛する奥さんがそれなりに綺麗な格好をして、子供に毎日ご飯を食べさせ、ドローイング用紙に雨が滴らない家に住む程度には、お金を稼ぎたいじゃないか。

では皆さん、ごきげんよう。

American Pop
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[これが正しい]WordPress記事内の最初の画像URLを取得する方法

WordPressの投稿記事から、記事内の最初の画像だけ取り出してサムネイルとして使いたい、という需要は結構ある。ので、検索すると結構ヒットする。

が、ヒットする記事のどれもが間違っている。確かに画像が1点しかない場合は正常動作するが、複数ある場合は最後の1点が取得されてしまうのだ。どうも元になった一本の記事を誰もが検証もせずアフィリエイト目的でコピペして使用しているようである。制作会社として有名なL社のブログなど、正規表現部分がすっぽり抜けており、まったく使用できない。こんな記事を堂々と公開している制作会社ってどうなんですかね!

正しい正規表現が、これだ(エラー処理等は省いてます)。

preg_match('/<img[^>]+src=[\'"]([^\'">]+)[\'"][^>]*>/si',
    $post->post_content, $m);
$img = $m[1]; // $img に画像URLが入る

取得する文字列でタグの閉じである > を無視していいワケがないし、そもそも1点だけでいいなら preg_match_all() を使用する必要もない。技術情報を掲載するなら、正しいかどうかの検証をまずしてもらいたいものである。

というワケで、感心したあなたは是非とも広告をクリックして行ってね!(笑)

Raleigh
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左利きの人がカリグラフィーを書く方法

久々の更新。

世の東西を問わず、文字の書き方は基本的に右利き用にできている。これは一説には全人類の9割近くが右利きであるという事によるものだが、少数派とはいえ当然ながら左利きの人がいる。彼らだってカリグラフィーに興味を持ったりするだろう。だが、筆や鉛筆などと違い、カリグラフィーはペンからして右利き用であり、そのままではかなり書きづらい。

だが案ずるなかれ。人間には創意工夫をする頭脳というものが備わっており、左利きの人がカリグラフィーをする方法ももちろん存在する。以下『カリグラフィー教室』(グラフィック社)という書籍から引用する。この本の著者の一人、ゲイナ・ゴフ Gaynor Goffe は左利きで有名な女性カリグラファーである。

とりあえず、左利き用のニブを用意しよう。左利き用は図のようにペン先がやや右上がりになっている。ミッチェル、ブラウゼ、スピードボール共に左利き用を用意している。
⇒こちらの記事を参照

で書き方なのだが、まずはこの方法。アンダーアームポジションと呼ばれ、通常文字の右側に置く手を、文字の下側に持ってくる。写真では手首の所で切れてるので判らないが、これ結構手首を左に曲げており、なかなかシンドイと思われる。通常は身体の正面で書くよう紙を置くのだが、これは正面よりやや左にずらした方が書きやすいだろう。

次にフックポジション。文字の上側から、何かを抱えるように腕と手首を曲げて強引にペンを文字の右側に持ってくる方法。これまたなかなかツラいものがあるかと思う。

最後にヴァーティカルポジション。紙を90度右へ回し、ストロークを右→左、下→上にする方法。この場合、ニブは通常タイプの方がいいだろう。一応書き順的には右利きと同じになるが、当然ながら出来上がりは90度傾いた形になるので、仕上がり具合の確認がめんどくさい。そのままで確認するにはニュータイプ並の空間認識能力が必要になるだろう(笑)。

ただでさえ訓練を要するカリグラフィーなのに、左利きの人はハンディキャップが大きいと思うが、これでなんとか楽しんでもらいたい。グッドラック。

Toxic
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画像をウィンドウいっぱいに切ることなく表示することができないという事を理解しない人のために説明を試みる。

最近のWebデザインの流行りとして、以下のようにページトップに巨大な画像をウィンドウいっぱいに表示する、というのがある。英語圏ではこのデザインは Hero(ヒーロー)などと呼ばれている(なんでやろ)。

ON OFF YES NO ON OFF YES NO
那覇市・農連市場近くにあるフレッシュジュースのお店
(このページの制作は私ではありません)

このヒーローを制作する際、画像全体をトリミングする事なく常にウィンドウぴったりに入れて欲しいという要望が時々ある。我々デザイナーはそれが矛盾を含んでいて不可能である事を即座に理解できるが、それをまったく理解しない人に最近遭遇した。ネットの掲示板でも同様の質問をしている人がいたので、理解できる人とそうでない人がいるようだ。どうも幾何学的な思考能力が弱い人がいるようである。こういう人がクライアントで、「出来ません」と返答してしまうと、「制作者に技術がない」「無能だ」というレッテルを貼られかねない。「無能なのはオマエだ」とクライアントに言い返せればいいのだが、なかなかそうも行かないと思うので、同じことで困っている人に向けて説明してみようと思う。

使いたいのは以下の画像とする。サイズは400×300、縦横比は4対3だ。こんな小さい画像を拡大したら荒れてしょうがないが、この際サイズはあまり関係ない。縦横比こそがが最重要である事をまず念頭に置いて欲しい。

fig01.png

で、ブラウザのウィンドウサイズが1200×900だとする。サイズは画像の縦横3倍(面積比9倍)だが、縦横比は4対3と図1の画像と同じである。よってウィンドウいっぱいに画像を拡大すれば、ピッタリとキレイに収まる事になる。

fig02.png

さてここからが問題。ユーザーがブラウザを操作し、ウィンドウのサイズを変更したとする。変更後のサイズは1200×675。縦横比は16対9 (A)。今の液晶テレビの規格と同じである。で、図1の画像をこのウィンドウいっぱいに表示しようとすると、図3か図4のいずれかになる。

fig03-04.png

図3は上下が若干切れてしまっている。CSS3でいう background-size: cover; の状態がこれである。これを解消しようと上下を入れようとすると、今度は図4のように左右に隙間が生じる。こちらは background-size: contain; である。この状態は、テレビ番組で古いVTRを流す時、両サイドが空いている事がよくあるので見た事がある人も多いだろう(タケモトピアノのCMがいまだにそうである)。ではまたウィンドウサイズを変更しよう。今度は768×1024。タブレットサイズで、縦横比は3対4 (B)。画像とは比率が逆になる。

fig05-06.png

すると図5、6のようになる。今度は左右が切れるか、上下に隙間が生じるようになる。図6は、家庭のテレビで映画のDVDなどを見る時によく見る状態である。テレビと映画のスクリーンの縦横比が違うためにこれが生じる。

さて、ではどうにかして (A) および (B) のウィンドウぴったりに画像を入れてみよう。すると図7、図8のようになる。

fig07-08.png

このように、縦横比の違う画像を無理矢理ウィンドウに合わせれば、当然ながら変形してしまう事になる。さて、ではこれを変形させずにウィンドウぴったりにするはどうするか。

...無理。不可能である。何をどうしても実現できない。これは、

制作者に技術がないからではなく、
物理的・幾何学的に不可能である。
縦横比の違う2つの長方形を
ぴったり重ねあわせる方法は存在しない

のである。ここまでを簡単に説明すると、「ぴったり重ねあわせるには2つの長方形が『相似』でなくてはならない(ただし回転は除く)」ので、その条件を満たさない限りは無理である。これで理解してもらえるだろうか。もしこれでも解らなかったら、もうお手上げである。後はなんとかご機嫌を取って了承してもらうか、それが叶わねば抗議して担当者を変えてもらうかしてもらうしかない。

制作者各位の幸運を祈る。

FF Legato
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沖縄の家紋(紋章)

たまーに「沖縄+家紋」とかで検索されてここに来る人がいるようなので、私の知っている限りをここに記す。以下、多分沖縄の家紋について書かれた唯一の書籍である『琉球紋章I』(本 恵郷著,琉球紋章館. 1992年)を参考にしている(※8/12追記:他にも文献がある模様。詳細はこちらへ )。

琉球紋章I(本 恵郷著,琉球紋章館. 1992年)

基本、沖縄の家々に家紋はない。

これ言うと結構びっくりされるが、沖縄ではごく一部を除き、家紋を持っている家はない。もちろん我が宮里家にもない。なので紋付袴なども存在しない。

なぜかというと、沖縄は知っての通り古くは「琉球」と呼ばれた独立国家であり、日本とは別の国だった。つまり日本から見てここは「外国」であり、日本の習慣である家紋なども元々存在しなかったからである。琉球は14世紀以降は当時の明や清(今の中国)の皇帝より冊封を受け、主従(?)関係を築いていたが、1609年に薩摩の侵略を受け、そこの属国のような関係にもなった。以降、薩摩は琉球からも税を取っていたが、薩摩はこの事を中国にひた隠しにし、そのため日本文化が琉球に広まるのを嫌い、これを禁止した。それが家紋が広まるのを防いだようだ。

で、家紋を持っていた「ごく一部」の人達とは誰のことかというと、旧琉球王家やその士族達である。薩摩藩士と直接付き合いのあった彼らは、その真似をして家紋を持つようになったようだ。なので沖縄で代々伝わっている家紋があるよという人は、結構いい家柄が多いと思われる。

一番有名なのは旧琉球王家・尚(しょう)家の「左三つ巴」である。これは日本でもごく一般的(主に寺社に多いようだが)なもので、それをそのまま使用している。

尚家紋章

しかし、それ以外の士族の家紋は非常に変わっており、日本本土ではまず見られないデザインが多数ある。もちろん専門の職人などはいなかったので、薩摩藩士の着物にあった紋をうろ覚えして参考にし、独自にデザインしていったようである。もう元が何だったのかよく判らない(笑)ものも多数ある。以下に参考書よりいくつか引用する。確か宮城保武さんは、これらの一覧をポスターにしてなかったかな...。ちょっとうろ覚え。

琉球の家紋(一部)

ちなみにこの紋章の習慣は、日本とヨーロッパにしか存在しない。同じく古い文化を持つ、中国やインド、中東ではなぜか発生しなかったようだ。なぜこんな便利なものを用いなかったのか、結構不思議である。

あと参考書の『琉球紋章I』だが、タイトルに 1 とあるからには 2 や 3 があるかと期待される方も多いと思うが、私が知る限り続編が発行されたという気配はない。残念である。この本は沖縄の古書店なら比較的楽に入手可能だと思う。相場は4,000円ぐらいかな。県内の図書館にもあるだろう(県立図書館では確認済み)。興味があればどうぞ。

Twentieth Century
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既存の紋章をロゴとして使えるか

古い紋章をなんかのロゴとして使いたい、という要望があったりするようだが、結論から言うと止めた方がいい。

森護著『西洋の紋章とデザイン』では、日本のとある企業がオランダ国王の紋章をほぼそのまま使って問題になったケースを紹介している。盾の中の図柄(charge)を変更して逃れようとしたが、これも認められなかったようだ。これは現行で使用しているものなのでもちろん著作権違反となるが、どんなに古い紋章でも、ひょっとしたら継承者が現存している可能性があるので、そのままはもちろん、一部改変などして使用するのも控えた方がいいだろう。著作権うんぬん以前に、「その紋章の家が関わっている」と勘違いされてしまうからだ。これは避けねばならない。

また紋章の特殊な傾向として、「描かれているもののモチーフと色が同じなら、形が違っていても同じものとする」という事がある。紋章はそのデザインを説明する blazon ブレーゾンという独特な口上方法があり、それに則っていればそれは同じものになる。例えば英国王リチャードI世の紋章は

Gules, three lions passant guardant or in pale
gulesの地に、縦に並ぶin pale3頭の歩いているpassant正面向きのguardantorのライオン
(ブレーゾン的に正しいかどうかは不明・笑)

なのだが、これは盾の形やライオンのデザインが多少変わろうとも、この色とこの姿勢である限り、たとえ中のライオンのデザインがポン・デ・ライオンだろうとも「同じもの」とされる(極端だけど)。

Royal Arms of England (1198-1340)
リチャードI世の紋章
この紋章は現英国王(=エリザベス女王)の紋章の
第1、第4クォーターに入っている

ものさしとぶんまわし(=コンパス)でまったく同じデザインが再現できる幾何学的な日本の家紋とは違い、図柄が大変具象的なので、描く人によって大きな違いが出るためにこういう考え方になったのだと思われる(コピー技術がなかったので人が描くしかなかった)。この違いを全部「違うもの」としてしまうとエラい事になるので、「ブレーゾンで説明して同じなら同じ」という事になっている。色についても同様で、詳説はさておき、使える色は9色と限定されており、その既定も大雑把である。例えば大多数がおよそ赤と認識できる色はすべて「赤(gules)」とされ、彩度や明度の違いは考慮されない。よって「ウチの紋章の赤はDICの何番だ」とかいう指定はすべて無効である。これも印刷・コピー技術が発達していなかった頃の名残である。なので、多少の形や色の変更で著作権から逃げられるとは思わないこと。

また同書には、正式に紋章の使用権を得た例も紹介している。同書内では「バーソロミュー社のクラン・マップ」と紹介されているスコットランドの紋章を網羅した地図の中から紋章を選び、それを使用してグッズを作った例がある。ちなみこの地図は現在も Harper Collins 社から発行されていて入手可能。

何でもそうだが、「正式に許可さえ得ればなんだって使用可能」である。当たり前といえば当たり前なので、くれぐれも無断使用は控えるよう。30年くらい前の本の情報で今もそうかは不明だが、割と好意的で良心的な額で貸してくれるようである。もしホントに使いたかったら正式な手続きを取ろう。といっても、どこに問い合わせればいいのやら(笑)。上記の地図の場合は出版社に問い合わせたようだが...。

English Script
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Hermann Zapfさんご逝去

世界的に著名なタイプデザイナー・カリグラファーである Hermann Zapf ヘルマン・ツァップさんが6月4日、亡くなられたそうだ。享年96。

我々書体好きで知らない人はいないだろうが、知らない人でも Mac をお持ちの方は氏のデザインした書体をすでにお持ちである。Zapfino、Optima、Palatino、Zapf Chansery、Zapf Dingbats などなどがそうである。カリグラフィーを学んでいたアップルの創業者、スティーブ・ジョブズは、Mac に搭載するフォントもかなりこだわって選んでいたため、質の高いこれらのフォントが選ばれたらしい。

私はもちろん、ツァップさんにお会いしたことはない。ただ2010年、ドイツのLinotype社(現Monotype社)に勤められている書体デザイナー・小林章さんが沖縄にいらした時、お土産に何がいいかと聞かれ、不遜にも「もし可能なら、ツァップさんとの書体開発でやり取りしたデザイン画か何かが残ってたら...」とお願いして、数点いただけた。うち以下のもの1点をデスクの前に飾っており、毎日眺めている。

Palatino Sansデザイン

これは Palatino Sans の開発時に、小林さんがデザインしプリントアウトしたものに、ツァップさんが直接手書きで指示を書き込まれたものである。思索の跡が伺われ、今となっては何か神々しささえ感じてしまう(笑)。他にも10点ほどいただいたが、残念ながら Fax で送られたコピーである。ただ、手描きでオーナメント類をスケッチしたものなので、もしオリジナルの原画だったなら...と悔やまれる(笑)。ちなみに写真の青いフォルダは、いつもツァップさんが使っていたものだそうである。ツァップさんから何か文書が来る時はいつもこれだったそうだ。フォルダには一切何も書かれておらず、商品名はおろかメーカーさえ不明である。ドイツならどこでも手に入るものだろうか。

zapf-sketch.jpg

ツァップさんの著書は和書では一冊だけ存在する。『ヘルマン・ツァップのデザイン哲学』がそれで、私はこれを自宅近くの小さな本屋に注文して入手した。まだネット書店がさほど発達してなかった頃だったと思う(だったらネット使ってるしね)。届いたと連絡があり受け取りに行った所、17,000円という値段に店員さんが驚いていた事を覚えている(笑)。当時結構ムリして購入したものだ。読んで眺めて、しばらくは本棚の肥やしだったが、カリグラフィーの学習を再開してからは模写もさせていただいた。おかげでちょっとカバーが傷んでいる。

偶然にもツァップづくしで年賀状を作成した4年前の2011年、日本でもツァップさんの作品展が開催された。行く予定で東京行きのチケットまで入手していたが、ちょうどその頃ちょっとしたトラブルが発生してしまい、ドタバタして行くのを断念した。今となっては悔やまれる。

心の師と仰ぐ方は何人かいらっしゃるが、また一人、お会いすることも叶わず逝かれてしまった。自分はいつになったら、いくつになったらあの方々へお目にかかれるほどになれるのだろうといつも情けなく思う。

Herzliches Beileid. ご冥福をお祈りします。

Paola Decorative
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カリグラフィーに向いている用紙

意外と選択に困る、カリグラフィーに使う紙の事について書いてみる。

カリグラフィーに向いている紙は、少々ラフで厚みのあるもの。とはいえあまり目が荒いと硬いペンでは引っかかって書きづらいので、細目の水彩画用紙が良いだろう。が、画材屋へ行った事がある人は判ると思うが、画用紙というのは思っているよりも結構高い。ワトソンやアルシュ、ファブリアーノなどの高級水彩画用紙は、作品に使うのならともかく、日々の練習用にそんな高価な紙は使えないだろう。

で、私が日頃愛用している用紙がこちら。

以前は Cotman コットマンとして売られていた用紙だが、最近商品名が変更されてこの Vifart ヴィフアールとなっている。この画用紙は他にも中目・荒目とあるが、この細目だけがカリグラフィーに向いている。リング綴じのスケッチブックタイプもあるが、これは切り離して使えるのでこちらの方がいいだろう。15枚綴りで1,000円程度なので、裏表ガッツリ使えば結構コストパフォーマンス的に良いと思う。私は大きな事務用品店や画材屋に寄ると、他のものを買うために行ったのだとしても、これがあれば条件反射で買ってしまっている(とは言っても、県内では久茂地の「ざまみ」でしか見たことはない)。

あとファインペーパーとして有名な「マーメイド」なども適している。MG西欧カリグラフィースクールのゴシック体の教材に付属している用紙はこれである。しかし全紙で売っている事が多く、いちいち切るのもめんどくさいので私はヴィフアール一択である。

あと、書く前にガムサンダラックやパミスといった粉を紙の上に撒こう。インクのにじみを防止する他、ペンが滑りすぎるのを防ぐ効果がある。練習時はしなくてもいいが、作品を作る時はぜひ使った方がいい。

これらの粉を紙に撒く際は、使い古した大きめの絵筆を使うとラク。毛先にちょいちょいと付け、紙全体を撫でると良い。

ちなみに上質紙やコピー用紙は論外。某教材にちょっと良い上質紙が付いてたが、通常は傾斜台に布やスウェードを敷いて書くと思うので、薄い紙はペンが紙を突き破ってしまう。インクの乗りも悪いので、まったく向いてないと感じた。参考までに。

Futura Display
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カリグラフィーで書き損じた場合の修正方法

『弘法にも筆の誤り』というぐらいで名人にさえ書き損じは生じるのだから、いわんや凡人である我々ならば日常茶飯事である。しかし長文を書いていて後半にミスったりした時の絶望感たるや、まさに筆舌に尽くしがたい。履歴書を書いててミスると、就職を諦めようかとさえ思う(くじけるなよ)。

カリグラフィーも書き損じたら基本的には書き直し。脱字なら、行間に余裕があれば、行をはみ出して小さくちょろっと書いたりする処理方法もありはするが、これはバランスの問題で、「そうしてもおかしくない」場合のみのやり方である。目立つようなら、やっぱり書き直さねばならない。

しかし、地色を敷いていない場合に限り、紙の表面を削って字を消すやり方もある。私がまず試したのは、普通のカッターでガリガリ削るやり方。これは紙が毛羽立ち非常に汚くなる上、ここに新たに字を書くのは困難な状態になるのでお勧めしない。

次に試したのがモノの本にあった以下の方法。写真のようにカミソリの刃をU字形につまみ、そのU字の底の部分でちょっとずつ削るやり方である。しかしこの方法は、速攻で紙を貫通し穴が開いた(笑)。かなり熟練しないと薄皮一枚を削るのはムリなようだ。

で、決定的でしかも簡単なやり方を最近知ったので紹介する。アイルランドのカリグラファー、Denis Brownさんが教材DVD『Italic Rhythm to Plythythmic Calligraphy』で紹介していたやり方である。

まず、半月形の刃を持ったカッターを用意する。半月形というのがミソ。普通の直刃のカッターでは不可能なので注意。DVDでは海外製(当たり前か)のものを使用していたが、日本では以下のものが入手しやすい。

これを刃を寝かせ、シャッシャとラフに誤字を削る。結構いい加減でも大丈夫。そんなに深くは削ることはない。

あらかた消えたら、砂消しゴムでもってその部分をこする。これで毛羽立ちが結構取れる。

最後に、適当なスプーンのウラでゴリゴリ撫でる。これで紙が均され、まぁまぁ字が書ける状態になる。

あくまで地色を塗っていない場合のみの処理方法だが、知っていれば何かと役に立つだろう。

Katsuji Tai
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西洋紋章にハマってしまった。

最近、故あって西洋紋章について調べている。紋章はよく emblem エンブレムや crest クレストなどと呼ばれるが、正式には coat of arms コート・オブ・アームズという。んで紋章学全般を heraldry ヘラルドリーといい、何で名前が一致してないのかは不明。隊の長を組長と呼ぶ新撰組方式なのかもしれない(違う)。紋章についてはMG西欧カリグラフィースクールでも学べるように、なぜかカリグラフィーとは一緒に教えられている事が多い。まぁ、どちらかに興味を持つ人はもう一方にも興味を持ちやすいのだろう。私がそうだしね。

調べてみて思ったのは、想像通りかなり奥が深いという事。日本の家紋とは違い、個人紋、つまり一人にひとつずつであり、そのデザインにダブりは一切許されない(家督相続人だけがそのまま継承し、兄弟は部分的にデザインを変える)という厳しいルールがあるので、そのバリエーションたるや凄まじいものがある。どうやってダブりチェックしてるかというと、なんと登録制だそうだ(その管理はイングランドでは College of Arms、スコットランドでは The Court of the Lord Lyon で行われている)。家紋のように勝手に使うことはまったく許されてないらしい。しかも使用できるのは貴族・騎士・郷士に限られているという(国章や市章の他、ギルドなどの団体が使うことはある)。紋章を管理する紋章官は、勝手に使用されている紋章を引っぺがすどころか、掲げている館そのものを叩き壊すほどの権限が昔はあったらしい。おおコワ。

その他使用できる色が決まっていたり(調べてみて思ったがヨーロッパの国々の国旗は、紋章の彩色ルールと合致している。どっちが先だったかは不明)、いろいろ興味深い情報盛りだくさんだが、もし興味のある方は以下の本を参照すると良い。

この本は1979年初版だが、日本にはこの本以前に紋章について著された本はなかったらしい。本邦初の紋章の専門書であり、かつ未だにこれ以上に詳しい本は存在しない模様。つまり、著者の森護氏はいきなり決定版を出してしまったのである(この時すでに紋章研究20年だったらしい)。なぜこれを超える本がないかというと、この本ですでにその紋章のフォーマットについては語り尽くされており、何百年も前からそのルールが決まっている事なので、新しく情報を追加する必要が生じないからである。じゃあ紋章学とはなんぞや、というと、誰それがいつどんな紋章を使っていたか、その系譜を辿り、分類・整理することが主眼らしい。使用が貴族・騎士・郷士に限られているという事は、自然その国の歴史を深く掘り下げる事になる。そうなるとほとんど歴史学となってくるので、そこについては別書をあたってねという事だ。

この本は現在絶版で古書店でしか入手できないが、実は版を変えたものが2種存在する。

実はこちらも現在絶版(笑)。三省堂版はB5サイズだが、こちらは四六判に変更され、カラー図版も減らされている。よって、あんまり購入する価値はない。

こちらは最近タイトルを変えて復刻されたものだが、値段が32,000円(+税)となかなか法外な値段が付いている。三省堂版も元々の値段は12,500円と、'79年当時の物価を考えると結構なお値段だが、現在古書市場で4,000円程度なので、そっちを購入した方がお得だと思う。

ちなみに同じ著者のこんな本もある。

こちらはまだ絶版ではなく、新刊が購入可能。前著の簡易版という感じで、情報量は減らされてるものの、ほぼ同内容。追加情報として、あちこちの企業が使ってる紋章っぽいロゴをあれがおかしいこれがおかしいと指摘している。まぁこれでもいいんだが、おそらく興味のある人はこれでは満足しないだろう(私がそうだし)。やっぱり三省堂版を探した方が良いと思う。

ちなみに三省堂版は、写真以外の線画の図版が凸版印刷である。その証拠に、所々図版の形に紙が凹んでいるのが見られる。本文が活版かどうかは定かではないが。マンガ雑誌は最近まで樹脂による凸版印刷だったらしく、当時はそんなに珍しくはなかったのだろう。

著者の森護氏は他にも多数紋章関係の書籍を発表してるが、2000年に亡くなられたそうだ。お会いしてみたかったなぁ。残念。

FreeDee
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